COLUMN

シックハウス症候群とその対策

昔の日本の住居は木造が主流ですき間が多く、良くも悪くも風の抜けやすい構造になっていましたが、近年の住宅は気密性が高まり、外気の気温の変化や騒音などの影響を受けにくいものとなっています。

結果的に冷暖房の効きやすさなどは格段に上がったのですが、それに伴い建築材料などから発生する化学物質などにより空気が汚染しやすくなった、また換気不足によってカビが発生したり、ダニなどの繁殖が起こるなどして健康に影響が出た、ということが報告されています。
これをシックハウス症候群と呼びます。

ここではシックハウス症候群についてお伝えしていきます。

  1. 家のすき間がなくなって……
  2. シックハウス症候群の症状
  3. シックハウス症候群の原因
  4. シックハウス症候群の対応策は?
  5. まとめ

1. 家のすき間がなくなって・・・

日本の家といえば木造。そしてふすまや障子、土の壁。床には畳が一般的でした。それは日本の高温多湿という気候を鑑み、雨風を凌ぎつつ気がこもらないという先人の知恵によって編み出された家でした。

しかしながら現代の住宅は進化し、いわゆる高気密化が進みました。壁面にはコンクリートや合板。窓は防音性の高いガラス、床はフローリング、と気密性が増したことで冷房や暖房の効果も上がり、省エネにも繋がっています。

ところが一方で空気の入れ替わりが行われにくい、ということが問題になっているのです。

また、元来木材や土を利用していた資材も現代では壁紙、コンクリート、塗料なども含め化学物質があらゆる箇所で使用されています。家の中の空気が溜まりやすくなったことで、こうした化学物質が滞留し健康に悪影響を及ぼしてしまうのです。

また気密性が高まったことによる湿度環境、カビやダニの発生にも関係があることがわかっています。

シックハウス症候群はこうしたまさに現代病であるといえます。但し、まだ明確な原因がわかっていないことから“症候群”とついており、仮の病名となっています。

2. シックハウス症候群の症状

新築時やリフォーム時に、シックハウス症候群の問題が発生する可能性があります。特に、免疫力の強くない幼児や、在宅時間の長い主婦の方などに多いようです。その症状の一例として下記のようなものがあります。

〈目〉充血、かすみ目、涙が出る、かゆみや痛み
〈鼻〉くしゃみ、鼻水、鼻づまり
〈耳〉耳鳴り、めまい
〈口〉のどの痛み、咳が出る、乾燥する
〈皮膚〉じんましん、湿疹
〈消化器〉下痢、腹痛、嘔吐

このような症状が家に居ることで表れるものをシックハウス症候群と呼んでいます。

3. シックハウス症候群の原因

厚労省と建設省が、建築資材に使用されてる化学物質について早急な対応策を求めた化学物質について代表的なものを挙げます。

〈ホルムアルデヒド〉
ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因としてもっとも有名な化学物質です。

毒性が強く低濃度でも体には悪影響があります。建築資材の塗料、防腐剤、接着などに使われています。
このホルムアルデヒドが放散する合板などの建材については基準が設けられています。
原則としてF☆☆☆☆、F☆☆☆、F☆☆、F☆で表記され、☆の数が多いほどホルムアルデヒドの放散量が少ないものになります。

F☆☆☆☆は内装において使用面積の制限はありませんが、F☆☆☆やF☆☆はその使用面積が制限されています。

〈キシレン〉
キシレンは無色で匂いがあり、常温では可燃性の液体です。シンナーや油性塗料、接着剤などの溶剤に使われているものです。揮発性も高く室内に放散します。毒性も強く吸引するとのどや目に刺激があり、ひどい時は頭痛やめまいなどを引き起こすことがあります。

〈アセトアルデヒド〉
刺激臭がある無色の液体です。反応性がいいため合成樹脂や合成ゴムなど様々な化学加工品を合成する時に原料として使用されます。
お酒を飲んだ人の体内でも生成され、二日酔いの原因としても有名です。

アセトアルデヒドはヒトの皮膚や粘膜に刺激を与えます。また、シックハウス症候群はこうした化学物質だけでなく、カビやダニ、花粉、たばこなどの生物的、人的要因からも発症する可能性があります。

4. シックハウス症候群の対応策は?

現在では建築基準法の改正により、下記の規制があります。

〈対策Ⅰ〉内装仕上げの制限:内装仕上げに使用するホルムアルデヒドを放散する建材には使用面積制限が設けられています。

〈対策Ⅱ〉換気設備設置の義務付け:原則的に全ての建築物には機械換気設備が義務付けられています。

〈対策Ⅲ〉天井裏などの制限:機械換気設備を設ける際には、天井裏、床下、壁内、収納場所などから居室へのホルムアルデヒドの流入を防ぐため次の①~③の措置が必要となります。

   ①建材による措置
   ②気密層、通気止めによる措置
   ③換気設備による措置

こうした規制の遵守は当然のことですが、シックハウス症候群の対策として出来る一番の対策は“材料選び”です。例えばフローリングの合板にはどうしても化学物質が使用されてしまいますが、無垢材などを多く使用することなどでその量は格段に抑えられます。

また、適度な湿度と十分な換気です。カビが発生しないためにも、冷暖房をし続けて閉め切った家の状態をつくり過ぎないようにしてください。また、カビはダニの大好物です。カビそのものでアレルギーに繋がる可能性もありますし、ダニの発生で皮膚にも影響が出てしまいます。また太陽光を採り入れるなどの、家の間取りにもひと工夫が必要です。

5. まとめ

天然の木材や珪藻土、漆喰など昔の住宅には自然素材がたくさん使われていました。現代の便利さへの追求が過度になるあまり、せっかく建てた家で家族が体調を悪くしてしまったら意味がありません。担当や設計士の方としっかり打合せして吟味し、快適で健康的な家を作り上げたいですね。